コーヒー器具えらびガイド

淹れ方

ケメックスでコーヒーを淹れる手順と、味を安定させるために本当に気をつけること

ケメックスで淹れると薄くなったり、逆に苦くなったりして「何が正解かわからない」と感じていませんか。この記事では、基本の手順に加えて、多くのガイドが省略している「湯の注ぎ方の緩急」と「粉層の崩し方」を具体的に解説します。読み終えるころには、狙った味に再現性を持って近づける淹れ方が身につきます。

ケメックスの淹れ方が他のドリッパーと決定的に違う点

ケメックスは専用ペーパーが厚く、抽出速度が遅いドリッパーです。

ここで大事なのが、お湯の注ぎ方を他のドリッパーと同じにしてしまうと、湯が滞留しすぎて過抽出になるという点です。ハリオV60のように細く注ぎ続けると、粉層に湯が溜まったまま落ちきらず、雑味が出やすくなります。

逆に言えば、注ぐ湯量と注ぐタイミングをコントロールすれば、ケメックスの厚いペーパーがもたらすクリアな味わいを最大限に引き出せます。この「緩急をつける注ぎ」が、ケメックスで美味しく淹れる核心です。

用意するもの

淹れ始める前に、以下を手元に揃えておきましょう。

実は、ケメックスで最も見落とされがちなのがスケールの有無です。目分量で淹れると、毎回湯量がぶれて味が安定しません。安価なキッチンスケールでも構わないので、必ず重量を測りながら淹れてください。

豆の量と挽き目の決め方

豆の量

ケメックス1杯(約240ml)に対して、コーヒー豆は15~18gが基本です。

2杯分なら3036g、3杯分なら4554gというように、杯数に応じて比例させます。ただし、豆の焙煎度合いによって調整が必要で、深煎りなら少なめ、浅煎りなら多めにすると味のバランスが取りやすくなります。

挽き目

ケメックスのペーパーは厚いため、中挽きから中粗挽きが適しています。

細挽きにしすぎると、湯の抜けがさらに遅くなり、過抽出で苦味や雑味が強く出ます。逆に粗挽きすぎると、湯が早く落ちすぎて薄くなります。市販の中挽き(グラニュー糖とザラメの中間くらいの粒度)を基準に、味を見ながら調整してください。

フィルターのセットとリンス

フィルターの折り方

ケメックス専用フィルターは、正方形または半月型の厚紙状になっています。

折り線に沿って円錐形に開き、3層になっている側をケメックスの注ぎ口側に合わせてセットします。この向きを間違えると、湯の流れが不均一になり、抽出にムラが出やすくなります。

リンス(湯通し)の重要性

フィルターをセットしたら、コーヒー粉を入れる前にたっぷりの湯(200ml程度)をかけてリンスします。

リンスには2つの目的があります。1つ目はペーパーの紙臭さを洗い流すこと、2つ目はケメックス本体を温めることです。特にケメックスはガラスが厚く冷えやすいので、リンスせずに淹れると抽出温度が下がり、味が薄くなります。

リンスした湯は必ず捨ててから、次の工程に進んでください。

コーヒー粉をセットして蒸らす

粉の入れ方

リンスしたフィルターにコーヒー粉を入れ、ケメックスを軽く揺すって粉の表面を平らにします。

粉が偏っていると、注いだ湯が一部にしか通らず、抽出ムラが生まれます。平らにすることで、湯が均等に粉全体に行き渡ります。

蒸らし(ブルーミング)

スケールをゼロにセットし、タイマーをスタートさせます。

まず、コーヒー粉全体がしっとり湿る程度(豆の量の23倍、30g分なら6090ml)の湯を、中心から「の」の字を描くように優しく注ぎます。粉が膨らんでくるので、そのまま30~45秒待ちます。

ここで大事なのが、湯を注ぎすぎないことです。蒸らしの段階で湯が多すぎると、粉層の中に通り道(チャネリング)ができてしまい、後の抽出でお湯が偏って流れます。粉全体が湿っていればOKです。

本抽出:湯の注ぎ方と緩急のつけ方

蒸らしが終わったら、本抽出に入ります。ケメックスで最も味を左右するのが、この注ぎ方の緩急とタイミングです。

1投目(蒸らし後~1分30秒)

蒸らしが終わったら、中心から渦を描くように湯を注ぎ始めます。

このとき、一気に注ぐのではなく、ケメックス内の湯面が常に一定の高さ(フィルターの7~8割程度)を保つように、断続的に注ぐのがコツです。湯を注いでは止め、少し落ちたらまた注ぐ、を繰り返します。

多くのガイドでは「一定の細さで注ぎ続ける」と書かれていますが、ケメックスの場合はこれが過抽出を招きます。湯が落ちるスピードを見ながら、注ぐ速度を調整してください。

2投目以降(1分30秒~3分30秒)

目標の総湯量(例:2杯分なら約360ml)に達するまで、同じペースで注ぎ続けます。

ただし、フィルターの縁に直接湯をかけないように注意してください。縁から湯が流れると、粉を通らずにコーヒーが薄まります。常に粉層の上に湯を注ぐイメージです。

総抽出時間は3分30秒~4分30秒が目安です。これより早く落ちきる場合は挽き目が粗すぎるか、湯量が少なすぎます。逆に5分を超える場合は、挽き目が細すぎるか、湯を注ぎすぎて粉層が詰まっている可能性があります。

抽出後の粉層チェック:味の答え合わせ

抽出が終わったら、フィルターを外す前に粉層の状態を確認してください。

理想的な抽出ができていると、粉層の表面が平らで、中央がわずかにくぼんでいます。一方、粉層の側面に縦筋(チャネル)ができていたり、粉が一部に寄っていたりする場合は、湯の注ぎ方が偏っていた証拠です。

実は、この粉層チェックこそが、次回の淹れ方を改善するための最も具体的なヒントになります。味が薄いと感じたときは、粉層に縦筋がないか確認してください。縦筋があれば、湯が粉を通らずに素通りしています。

よくあるトラブルと調整方法

味が薄い・水っぽい

原因は大きく2つです。

1つ目は湯温が低すぎること。ケメックスは抽出時間が長いため、最初の湯温が90℃を下回ると、抽出が進むにつれて温度が下がりすぎて成分が出にくくなります。沸騰直後の湯を一度ケトルに移し、30秒ほど待ってから注ぐと、ちょうど良い温度になります。

2つ目は挽き目が粗すぎるか、湯の注ぎ方が速すぎること。粉と湯の接触時間が短くなり、成分が抽出されません。挽き目を一段階細くするか、注ぐスピードを落として湯が粉と触れる時間を延ばしてください。

苦味や雑味が強い

これは過抽出のサインです。

挽き目が細すぎるか、湯の注ぎ方が遅すぎて粉層に湯が溜まりすぎている可能性があります。挽き目を一段階粗くするか、注ぐ湯量を少し増やして湯の滞留時間を短くしてください。

また、**湯温が高すぎる(96℃以上)**場合も、苦味成分が出やすくなります。沸騰直後の湯を使わず、少し冷ましてから注ぐようにしましょう。

抽出時間が長すぎる・短すぎる

抽出時間が5分を超える場合は、挽き目を粗くしてください。逆に3分以内に落ちきる場合は、挽き目を細くするか、湯を注ぐスピードを落とします。

ただし、抽出時間だけを目標にしないでください。時間はあくまで目安で、最終的には味で判断します。3分30秒で美味しければそれが正解ですし、4分30秒かかっても美味しければ問題ありません。

状況別の推奨設定

浅煎り豆を淹れるとき

浅煎りは成分が溶け出しにくいため、湯温は高め(95~96℃)、豆の量は多め(1杯18g)、挽き目は中挽きに設定します。

抽出時間は4分前後を目安に、酸味と甘みがバランスよく出るように調整してください。

深煎り豆を淹れるとき

深煎りは成分が出やすく苦味も強いため、湯温は低め(90~92℃)、豆の量は少なめ(1杯15g)、挽き目は中粗挽きに設定します。

抽出時間は3分30秒前後を目安に、苦味が出すぎないように注意してください。

3杯以上まとめて淹れるとき

ケメックスは複数杯を一度に淹れられるのが強みですが、豆の量が増えると粉層が厚くなり、湯の抜けが遅くなります。

挽き目を通常より一段階粗くして、湯の流れを確保してください。また、注ぐ湯量を増やして湯面の高さを保ち、粉全体に均等に湯が行き渡るようにします。

ケメックスの淹れ方を安定させるために今日からできること

ケメックスで美味しく淹れるには、再現性が鍵です。

毎回同じ味を出すために、豆の量、湯の量、湯温、抽出時間の4つを記録してください。スマートフォンのメモアプリで十分です。「豆30g、湯360ml、湯温94℃、抽出時間4分10秒、少し酸味強め」といった簡単なメモを残すだけで、次回の調整が格段に楽になります。

そして、調整するときは一度に1つだけ変えることが重要です。挽き目と湯温を同時に変えると、どちらが味に影響したかわからなくなります。まず挽き目だけ変えて味を見る、次に湯温を変える、という順番で進めてください。

ケメックスは抽出に時間がかかり、一見難しそうに見えますが、実は「湯の注ぎ方の緩急」という1点を押さえるだけで、味が驚くほど安定します。この記事で紹介した手順と調整方法を試しながら、あなた好みの一杯を見つけてください。

写真: markolaz(CC BY 2.0)